血液腫瘍内科
後期研修
外科医はメスを携えて仕事をします。私たち血液・腫瘍内科医にとって「メス」に当たるものは何でしょうか。
一般的には「抗がん剤」という答えが返ってくるかもしれません。しかし、私たちの強みは抗がん剤が使えることだけではありません。
血液疾患を診るということは、文字通り全身管理を行うということです。急性白血病、慢性白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫などの造血器悪性疾患に始まり、再生不良性貧血、特発性血小板減少性紫斑病などのいわゆる血液難病、またほかの診療科の疾患が基礎にあることも多い、鉄欠乏性貧血や巨赤芽球性貧血、薬剤性血小板減少症など、血液の異常全てについての診断・治療はもちろん、感染症予防とコントロール、輸液、輸血など、総合的かつ応用的な内科力が求められる診療科なのです。
小児科を卒業したばかりの高校生から超高齢者まで、患者年齢が幅広いことも特徴ですので、それぞれの年代に則したライフスタイルやQOLを最優先に考えながら治療を選択していく必要があります。血液腫瘍内科は内科の中でも専門性が高いとされる一方で、「特殊な領域」とか「潰しが効かない」と捉えられがちですが、実は、内科医としての守備範囲の広さを生かして、大学での専門研修の後に家庭医や開業などの道に進むケースも決して珍しくありません。
当科の後期研修では、血液データ、骨髄所見、画像診断など諸検査を通した診断能力、抗がん薬、分子標的治療薬、がん免疫療法薬、免疫療法薬など多種多様な薬物療法の実際と管理、高度な専門性と経験が要求される造血幹細胞移植や緩和医療まで、一人前の血液専門医として活躍できるスキルを養います。また、将来がん薬物療法専門医やがん治療認定医(歯科口腔外科も含む)を目指す方にとっても、当科で全身管理とがん薬物療法の実際について学ぶ意義は大きいと考えます。研修内容・期間など個別にご相談に乗りますので、お問い合わせください。
臨床研修の特徴
-
分子標的治療薬やがん免疫療法薬をはじめとして、血液腫瘍内科の治療は日進月歩で進歩し続けています。当科ではグローバルな第II相、第III相の臨床試験に積極的に参加しており、日本のみならず世界の治療成績向上に貢献することを目的としています。国際的な治療の最前線にたって血液内科の後期研修を行うことは、将来専門医となった時に大きな財産となります。
-
血液腫瘍内科の入院診療は全てチーム医療で行われます。後期研修では、シニア(担当医)として、チーフ(指導医)、ジュニア(前期研修医)と一緒に診療を行います。血液内科の診療は多くの診療科との連携が必要不可欠です。病理診断科、血液検査科、放射線診断・治療科、看護部、薬剤部、栄養科など、大学病院ならではの充実した診療体制でチーム医療を学びながら、全人的な内科診察能力を養うことができます。
-
診療圏が神奈川、静岡、東京、山梨と広範囲に及ぶため、豊富な症例を経験できます。後期研修として研鑽を積むために理想的な環境です。
-
当科は、厚生労働省から造血幹細胞移植地域拠点施設の認可を受けています。関東の移植拠点病院の中心的存在として、積極的に造血幹細胞移植に取り組んでいます。
-
新入院患者検討会、移植カンファレンス、リンパ腫病理カンファレンス、血液検査室症例検討会、臨床腫瘍カンファレンス、論文抄読会など、多くの勉強の機会が用意されています。また県内の他の施設との交流も大変盛んで、若手血液内科医を対象としたさまざまな研究会・学会が行われています。
-
東海大学八王子病院、海老名総合病院、伊勢原協同病院、平塚共済病院、小澤病院、厚木佐藤病院などの病院と密接な診療提携を行っています。
主要疾患入院実績(2023年)入院のみ(1症例の複数回入院含めた入院例)
-
急性骨髄性白血病: 69例
-
急性リンパ性白血病: 37例
-
骨髄異形成症候群: 14例
-
ホジキンリンパ腫:6例
-
非ホジキンリンパ腫: 142例
-
多発性骨髄腫:50例
-
同種造血幹細胞移植:62例
4-6年目の到達目標
-
血液専門医受験資格に必要な代表的血液疾患を経験すること。
-
各血液疾患の診断と治療プロトコール(標準的治療、治験などの最新治療、移植治療)を理解し、入院および外来で実践できること。
-
外来化学療法のプロトコールを理解し、安全に施行できること。
-
輸血療法の適応を理解し、正しく血液製剤を投与できること、
-
医学生、初期・後期研修医の指導ができること。
-
がん薬物療法専門医取得を目指す場合は、日本臨床腫瘍学会の教育プログラムに沿って、乳腺内分泌外科、呼吸器内科、婦人科などをローテートして研修を受けることも可能です。
-
論文の作成(和文、英文)と学会発表(国内、海外):合計2つ以上行うこと。(学会年会費、学会出張費についてはサポート体制が整っています)
臨床研修カリキュラム
-
病棟・外来研修期間
指導医を含むチーム医療で、血液・腫瘍疾患の入院と時間外外来・救急外来を担当し、検査・診断・治療に至る血液・腫瘍学の基礎を身につけることを目指します。表1に示すように、後期研修1年目は内科専門医取得のための症例を経験するため、内科学系各診療科等を選択し2ヶ月単位で各科をローテーションします。2年目は東海大学以外の地域連携施設での研修を行います。また、2年目からは血液専門医研修を並列で開始することもできます。(表2)3年目は大学病院での研修となります。
-
研究期間(大学院コース)
1年間それぞれの希望のテーマに基づいて研究に専心します。基礎研究では希望に応じて基礎医学系講座と連携し研究を行えます。臨床研究ではバイオメディカルリサーチセンターで臨床統計学の指導を受けながら研究を行うことができます。
表1:内科専門医研修
表2:血液専門医研修(サブスペシャルティ研修)
1年間は下記の連携施設での研修となります。血液腫瘍内科では東海大学八王子病院、伊勢原協同病院、海老名総合病院、国立がんセンター中央病院(造血幹細胞移植科)諏訪中央病院での研修が可能です。
図1:連携研修機関
週間スケジュール
第2、第4土曜日、日曜はOn call体制
研修機関としての指定
-
日本血液学会認定血液研修施設
-
日本臨床腫瘍学会認定研修施設
-
日本骨髄バンク非血縁者間骨髄・末梢血幹細胞移植認定施設