リウマチ内科
リウマチ内科の紹介
東海大学医学部 リウマチ内科ホームページ
こちらをご覧ください
科の構成
教授/1名 講師/2名 助教/4名 臨床助手/4名 非常勤/5名
出向先・関連病院
東海大学医学部付属八王子病院
多摩南部地域病院
神奈川リハビリテーション病院
小林病院
亀田森の里病院
独立行政法人国立病院機構相模原病院
山近総合病院
井上整形外科
厚木ひだまり内科リウマチ膠原病クリニック
認定医/専門医、指導医の数(出向先・関連病院も含めた合計)
メインスタッフ
佐藤 慎二(さとう しんじ)教授 診療科長
日本内科学会認定医・指導医
日本内科学会総合内科専門医
日本リウマチ学会専門医・指導医
日本リウマチ財団登録医
山田 千穂(やまだ ちほ)講師、医局長
日本内科学会認定医・指導医
日本リウマチ学会専門医・指導医
佐々木 則子(ささき のりこ)講師
日本内科学会認定医・指導医
日本内科学会総合内科専門医
日本リウマチ学会専門医・指導医
石井(西川)あゆみ(いしい あゆみ) 助教
日本内科学会認定医・指導医
日本内科学会総合内科専門医
日本リウマチ学会専門医・指導医
太田 裕一朗(おおた ゆういちろう)助教
日本内科学会認定医・指導医
日本内科学会総合内科専門医
日本リウマチ学会専門医・指導医
石井 晶(いしい あきら)助教
志村 佳瑚(しむら けいご)助教
杉山 麻衣(すぎやま まい)臨床助手
小島 梓(こじま あずさ)臨床助手
大久 俊輝(おおひさ としき)臨床助手
青木 海斗(あおき かいと)臨床助手
診療体制
関節リウマチを代表に全身性エリテマトーデス、全身性強皮症、多発性筋炎/皮膚筋炎など膠原病・自己免疫疾患が診療対象で、難病治療研究センターとしても機能しています。神奈川県西部の同疾患群の拠点病院で、診療圏は神奈川県西部を中心とするほか、横浜、川崎、静岡県にまでおよび、多彩なリウマチ性疾患を経験することが出来ます。年間外来患者数は約5,000人、入院患者数は約200人です。関節リウマチに対しては、抗リウマチ薬および生物学的製剤による積極的治療で寛解を目指しています。また、診療以外に治験や臨床研究も積極的に行っており、難治性病態の診断や治療のガイドライン策定に積極的に参加しています。
指導体制の特徴
スタッフおよび臨床助手・研修医・学生を含めたチーム医療を行っています。
通常業務以外に教授回診、症例検討カンファレンスで治療方針や疾患・薬物療法について指導を行っていますが、教授を始め教室全員が積極的に意見交換を行い、診療・指導に取り組んでいます。診療科長である佐藤教授は、その豊富な臨床経験に基づく自己抗体研究を通じて、リウマチ膠原病診療の進歩に貢献しています。
他の診療科との連携
リウマチ性疾患は多臓器にわたり障害を及ぼす疾患のため他科との連携が不可欠で、内科領域のみならず整形外科・形成外科などの外科領域、耳鼻科・眼科・皮膚科・精神科との連携も必要です。そのため、当科では、多領域にわたり様々な臨床経験を積むことができます。さらに、症例検討会やカンファレンスを通じ近隣の医療機関とも連携しています。
教育体制
病棟診療はスタッフを始め臨床助手・研修医・学生を含めたチーム医療で行っており、1チーム3~4名で構成されています。スタッフの指揮の下、臨床助手・研修医・学生に指導を行い、興味深い症例においては症例カンファレンス以外に、当科が中心的役割を担っている①湘南西部リウマチ性疾患症例検討会や②膠原病胸部画像読影カンファレンスでも呈示し、研修医への教育や近隣の医療機関との意見交換を行っています。①については近隣の整形外科医も参加し関節リウマチに対する薬物療法、手術の適応につき意見交換をしています。②については呼吸器内科医や皮膚科の専門医も参加し、ミニレクチャーや症例検討を通じて近隣の医療機関と交流を深めています。また、非ステロイド性抗炎症薬や副腎皮質ステロイド薬、抗リウマチ薬、生物学的製剤、免疫抑制剤といったリウマチ内科でよく用いられる薬物療法の基本的使用法やレントゲン写真や関節エコーなどの読影技術についてクルズスや診療を通じて学びます。
また、関節リウマチ治療における抗リウマチ薬、生物学的製剤などの有効性・安全性に対する多数例の分析結果や膠原病に見出される特異自己抗体と臨床特徴の関連に関する検討結果を日本リウマチ学会総会などで発表しています。さらに、病態解明や新規治療法に結びつくような貴重な症例については日本リウマチ学会総会および関東支部集会、日本臨床免疫学会、日本臨床リウマチ学会、関東リウマチ研究会、神奈川リウマチ研究会等で症例報告しています。アメリカリウマチ学会、ヨーロッパリウマチ学会での発表、あるいは参加も行っています。
キャリア・資格・専門職取得について
-
リウマチ専門医や内科認定医、総合内科専門医、骨粗鬆症認定を取得できます。そのほか、小児科医師のリウマチ専門医取得のために研修できる場を用意しています。
-
研究者や医学部教員として、大学で研究を行うことができます。
-
リウマチ内科医は患者数に比し絶対的に不足しているため将来どこにいっても必要とされる分野です。専門分野を活かして開業することも可能です。また、多彩な症状を呈する症例を豊富に経験できるため内科の各領域における診療技術や知識を習得することができます。将来的には、全人的な医療が実践できる総合内科医としての活躍も可能です。
研究体制
リウマチ内科では、現在臨床研究と基礎研究の両面で研究活動が行われています。臨床研究では1.抗リウマチ薬の有効性と安全性に関わるエビデンスの作成、 2.ステロイド性骨粗鬆症の予防と治療に関わる研究、3.膠原病に見出される自己抗体と病態との関連を追究する研究、4.全身性膠原病の予後改善のための新規治療法の開発などを行っています。臨床研究の主たる目的は診療に貢献できるエビデンスの作成です。関節リウマチのアンカードラッグであるメトトレキサート診療ガイドライン(2016 年度および2020年度 改訂版)作成の中心的役割をはたし、その成果によりリウマチ社会医学賞を授与されています。また、近年、特発性肺線維症(idiopathic pulmonary fibrosis:IPF)の線維化に有用性が認められた抗線維化薬の全身性膠原病の間質性肺疾患(interstitial lung disease:ILD)に対する有効利用に期待が高まっていることを受けて、膠原病に伴う進行性線維化をきたすILDに対する抗線維化薬の有効性の検討をおこなう臨床研究を進めています。
基礎研究として、東海大学医学部基礎医学系分子生命科学 猪子英俊教授が中心として行った厚生労働省ヒトゲノムテーラーメード研究事業に参加して、関節リウマチの遺伝子解析を網羅的に行ないました。さらに、ステロイド骨粗鬆症の病態研究として、『ヒト多分化性間葉系幹細胞の骨芽細胞、脂肪細胞への分化へのステロイド性の影響』や血管炎の発症機序に関する研究として抗好中球細胞質抗体が関与する経路とは別の『新たな好中球活性化経路におけるHeat shock protein60(HSP60)の役割』、さらに最新のフローサイトメトリーを駆使した免疫学教室の穂積教授との共同研究による『関節リウマチにおける治療前後のT細胞プロファイルの解析』をおこなっており、将来的には新たな治療法の開発につなげたいと考えています。
臨床免疫学の領域では、病因・病態と関連する新たな自己抗体の追究も行っております。これまで、いくつかの未知の自己抗体を見出しており、引き続き、その自己抗体の特異性や臨床上場との関連について検討をおこなっています。未発見の自己抗体は多く存在すると考えられており、それらを同定することはこれまで発見されてきた多くの自己抗体同様に、診断・治療法の選択・活動性の評価・予後の推定ならびに病態解明に資するものと期待されます。
当教室では、臨床的に筋炎症状に乏しい皮膚筋炎(Clinically amyopathic dermatomyositis:CADM)症例に約140kD 蛋白を認識する自己抗体を見出し、同抗体陽性例は、陰性例と比較して、高頻度に急速進行性間質性肺炎(rapidly progressive ILD:RP-ILD)を併発していることを明らかにしました。その後、対応抗原が、ウィルス感染での自然免疫機構で重要な役割を果たしている蛋白のmelanoma differentiation associated gene 5(MDA5)であることを突き止め、同抗体測定ELISA(酵素結合免疫吸着法)を確立しました。さらに,医学生物学研究所と共同でELISA の臨床現場での実用化に取り組み、2016年10月には抗MDA5抗体検出試薬として保険収載されました。抗MDA5 抗体の測定は、極めて予後不良とされるRP-ILD 併発CADM の早期診断・治療法の選択に有用であり、臨床の現場におけるELISA測定により、同病態の早期診断ならびに早期治療からの強力な治療が可能となりました。その結果、同疾患の予後の改善が認められたことで、臨床医学の発展に寄与しています。同病態に対する治療として、現在、高用量副腎皮質ステロイドホルモン薬に免疫抑制薬を2剤併用する強力な治療が推奨されていますが、この治療を持ってしても救命できない症例が経験されます。そのため、当科では、上記治療に加えて、早期から血漿交換療法を併用する治療を試みて、良好な結果を得ています。今後、多施設参加の大規模前向き試験による有効性・安全性の検討を通して実臨床における治療法として確立され、予後の改善につながることが期待されます。
将来展望
リウマチ内科学は、内科学の中でも最も進歩がめざましい領域の一つです。関節リウマチの治療は炎症性サイトカインや免疫細胞を標的とした生物学的製剤と呼ばれる分子標的薬剤が毎年上市されています。これらの最新の薬剤の有効率には目を見張るものがありますが、薬剤の適応、投与法、副作用モニタリングにはより高度な医療知識や専門技術が要求されるようになっています。
しかし、我が国における関節リウマチの治療は歴史的に整形外科主体に行われてきており、リウマチ内科医は絶対的に不足しています。一方、他の膠原病においても、臓器病変が多岐にわたり複雑化しており、特殊な免疫抑制薬や種々の生物学的製剤を使用する機会は年々増え、治療はより専門化しています。最近、各領域での専門医資格が重要視されてきていますが、我が国の専門医制度の問題点として資格を持っているが実質的な技量が伴っていない場合もあります。
当科においては多数のリウマチ・膠原病患者の診療を通じて、種々の臓器病変に対応でき、臨床薬理学にも精通している真のリウマチ専門医が育成できる環境を整えようとしています。また、病態解明や治療に直接結びつく基礎的な研究も臨床医として必要です。リウマチ学では今後、自己免疫現象と遺伝的・環境的因子との関わりを追究してリウマチ・膠原病の病態を解明することやゲノム薬理学とそれにつながるテーラーメード医療の重要性がますます高まってくると思われます。すなわち、病態解明と遺伝情報に基づく発症予防、予後の予測,薬剤の有効性や副作用の予測が可能な時代が近い将来くると考えられます。この領域では基礎医学との連携が不可欠であり,現在,新規自己抗体の追究や既知の自己抗体の病態への関与の解明による診断のためのバイオマーカー・新規治療法の開発や分子生命科学との共同研究によるリウマチの疾患遺伝子や予後推定につながる遺伝子の探索を進めています。
リウマチ内科で多臓器障害性のリウマチ膠原病の診療を研修することで内科学全般にわたる臨床能力を身につけるとともに、専門化した最先端の臨床や研究が学べる環境は必ず興味がもてるはずです。